遺産共有と共有物分割請求

遺産共有とは

遺産共有とは、動産や不動産などを持っていた人が死亡した場合で、法定相続人らが遺産分割協議をしないまま、それらの遺産が法定相続人間で共有となっている状態をいいます。
以下では、特に不動産について説明します。

不動産を共有することにより起こりうるトラブル

不動産を共有すると、共有者全員が同意しない限り、売却、建築、取り壊しなどの処分ができません。
共有者の一部が共有物に変更を加える行為をしている場合に、他の共有者は、変更行為を禁止するよう求めることや、原状に戻すように求めることもできるとされています(最判平成10年3月24日)。
このように、共有者の一人でも処分の方法に反対する者がいる場合には、不動産を処分することができなくなってしまいますので、不動産を活用するためには、できるだけ共有の状態を解消することが望ましいと言えます。

遺産共有の共有物分割手続について

通常であれば、共有物の分割のためにとる手続きは共有物分割となりますが、遺産共有の場合、その共有関係解消のためにとる手続きは、遺産分割となります(最高裁昭和62年9月4日)。遺産共有の解消のためには、遺産分割協議における合意か、家庭裁判所の審判を経る必要があると考えられています。
ところで、遺産共有であっても、各自の相続分を共有持分として相続登記をすることはできます。そうすると、登記上は通常の共有関係と同じになったように見えますが、その場合であっても、遺産共有では原則として共有物分割請求はできません。
一方、法定相続人間で、遺産分割協議が成立した場合には、その後、当該遺産に属する共有物について、共有物分割の手続きを利用することができます。

共有物分割とは

共有物分割とは、共有物について共有者間で話し合い、共有物を単独の所有とするなどして共有状態を解消することをいいます。
共有物については、できるだけ共有の状態を解消することが望ましいと考えられてきたことから、法律も「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる」として、共有者に、共有状態を解消する権利を認めています(民法256条1項)。
共有物分割請求は、共有者間で共有物の分割について話し合いが調わない場合に裁判所に請求することができる手続きです。
共有物分割請求を裁判所に請求しますと、裁判所は、共有者間にとってもっとも適切と判断した分割方法で共有物を分割します。

分割方法を決める方法について

共有物の分割方法には、以下の方法があります。

遺産分割の3つの方法
遺産分割の3つの方法

現物分割

共有物をそのまま分割する方法です。
たとえば、一筆の不動産を持ち分に応じて分筆するなどがありますが、この方法をとれるのは、共有物を現物のまま分割することができる場合に限られます。また、分割によってその価値が著しく低下してしまう場合には、現物分割は適さないことになります。

代償分割

共有者の一人がその共有物を単独で所有するかわりに、共有者の持分に対して代償金を支払う分割方法です。
遺産の評価や代償金を支払う資力の有無が問題となります。

換価分割

共有物を売却し、その売却代金を共有者で分割する方法です。
公平な分割ができますが、売却のための費用や譲渡所得税がかかります。

最後に

共有物分割請求は、遺産共有の場合には、原則として利用できない手続きです。しかし、遺産分割協議が成立した後であれば、各相続人は共有物分割の手続きを利用することができます。つまり、「相続人間で遺産を共有する」との遺産分割協議をした場合であっても、その後で相続人の誰かが裁判所に共有物分割請求を求めたとしたら、最終的にその遺産は分割されてしまいます。
そのため、遺産分割協議の段階において、遺産はなるべく共有としないように内容を吟味して進めた方がいいでしょう。
最適な分割方法について迷われた場合には、弁護士にご相談ください。

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