遺留分に関するよくあるトラブル

一人にだけ「相続させる」遺言が出てきた

質問

遺留分の主張がされた!
父が死亡しました。相続人は、母と、長男である私と、長女です。父の死後、公正証書での遺言が発見されました。遺言には、「遺産は、すべて母に相続させる」と書いてありました。父の遺産は、父名義の建物(母が住んでいます)だけです。

回答

この事例の場合、父は、公正証書遺言を残しているので、父の遺産は、原則として、遺言に定められた方法に従って相続されることになります。遺言の内容に従えば、父の遺産は、すべて母が貰い受けることなります。

一方、一定の相続人には、最低限の遺産を貰い受ける権利(「遺留分減殺請求権」といいます)があります。この事例で言うと、長男と長女には、遺留分減殺請求権があります。

母が、生前、父の面倒を良く見ていた場合などで、他の相続人(長男、長女)も、母が、父の遺産をすべて相続することに納得している場合には、特に問題はありません。

しかしながら、この事例の場合、長男と長女は、何も貰えないことになります。父が、長男と長女の意見も聞いたうえで遺言を作成していた場合には別として、長男と長女が遺言の内容を知らない場合で、いきなり、このような遺言が発見された場合には、長男や長女は、不満に思うこともあるでしょう。

そこで、長男や長女は、その不満を解消するために、遺留分減殺請求権を行使することになります。そして、この事例において、長男や長女が遺留分減殺請求を主張した場合、どうなるかを考えてみましょう。

長男や長女が、遺留分減殺請求権を行使した場合、母は、遺留分相当額を長男や長女に分与しなければなりません。この場合、たとえば、母や、長男と長女に対して、不動産の権利相当の現金を分与することになります。母に、分与するだけの現金があれば別ですが、現金がない場合(もしくは相続した現金が少額の場合)、不動産を売却せざるを得ません。このように、遺留分相当の財産をどのように分割するかについても問題が生じます。

このようなトラブルが生じた場合には…

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遺産分割の話し合いをしているうちに相続税の申告期限が迫ってきた

質問

母が亡くなりました。母は、私を含めた3兄弟のために遺言を作成していましたが、9割以上の財産を長男に「相続させる」という内容であったので、長男以外の私と弟の2人が遺言の内容に納得していません。
兄弟3人で相続財産分割について話し合いをしていますが、そうこうしているうちに相続税の申告期限が迫ってきました。どのように対応したらいいでしょうか。

回答

特定の相続財産を特定の法定相続人に「相続させる」旨の遺言は、遺贈と解すべき特段の事情がなければ、相続開始時に直ちに当該相続財産を分割したものと考えます。すなわち、このような遺言については原則として相続財産分割の余地がないこととなります。
相続財産分割の余地がなくても遺留分を侵害している内容の遺言であれば遺留分減殺請求は可能です。遺留分減殺請求権が行使されると相続分の指定は遺留分を侵害している限度において失効し、遺留分権利者に帰属します。
しかし、相続財産に不動産などが含まれている場合などは評価額に争いが生じたり、どの財産をどの相続人が承継するのかなど問題になりますので、相続人間で、相続財産分割協議を行うことが通常です。
遺留分減殺請求を行い、相続税申告期限(死亡日の翌日から10ヶ月以内)までに相続人間で遺産分割に関する話し合いがまとまらなければ、長男は遺言の内容通りに相続税の当初申告をします。その後、返還すべきまたは弁償すべき額が確定した場合に、兄弟にて修正申告または更正の請求をします。

遺言によって相続された財産以外に相続財産がある場合、その相続財産分割の対象となるものについては、法定相続人が法定相続分どおりに相続したものとして「未分割による申告」を行う必要があります。
未分割による申告の後に遺産分割協議がまとまった場合には、まとまった内容で改めて申告を行うことは上記と同様です。また、相続税を納めすぎていた場合には還付を求め、納税額が少なかった場合には不足分を納税するといった調整を行うことになります。
ただし、「未分割による申告」の場合、相続税上の特例を受けられなくなる可能性がありますので、ご注意ください。

遺留分を考慮する以外に遺言内容と異なる相続財産分割を実施すると相続人間で交換や贈与といった相続税以外の所得税や贈与税の課税が生じる可能性があるため、遺産分割協議時には、税理士や弁護士に相談することをおすすめします。

生前に相続放棄を求められた

質問

私の実父は再婚し、私には異母兄弟がいます。先日、父から、再婚相手との間の子に財産を遺したいので、生前に相続放棄をしてほしいと求められました。私は生前に相続放棄しねければならないのでしょうか。

回答

相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」に家庭裁判所に対して申述して行うものです(民法915条1項、938条)。そして、相続は死亡によって開始します(民法882条)。つまり、被相続人がなくなる前(生前)に相続放棄をすることはできませんので、生前に相続放棄をするよう求められたとしても法的に応じる義務はありません。

もっとも、遺留分については生前でも放棄をすることができるため、その限りで応じることは可能です。
ただし、相続の開始前に遺留分を放棄する場合には、家庭裁判所で許可を受けなければなりません(民法1043条1項)。被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行い、審判手続において許可を受けることになります(家事事件手続法216条1項)。

許可の基準としては、①申し立てをした者の自由意思に基づいて行っているか、②遺留分を放棄する理由の合理性・必要性があるか、③遺留分を放棄することと引き換えになる代償措置があるか・あるとしてどのような内容か、といった点を考慮して判断されることになります。
なお、遺留分を放棄しても相続人としての地位は失われません。

具体的な遺留分の計算はどのようにするのでしょうか

質問

父が亡くなりました。父には財産として、自宅(6000万円)と預金(1200万円)があり、借入が900万円残っていました。相続人は、姉、私、弟の3名です。
ところが、父は遺言書を書いており、姉に自宅を相続させる旨が記載されていました。また、父は、弟に対し、亡くなる半年前に弟の経営する店舗への援助として300万円を贈与していたことが発覚しました。
遺留分減殺請求を行いたいと思いますが、私には、この場合どれくらいの遺留分が認められるのでしょうか。

回答

遺留分減殺の算定の基礎になる財産

遺留分は、被相続人が相続開始のときにおいて有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して算定します(民法1029条1項)。また、贈与については、相続開始前の1年間になされたものと当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものの価額が算入されます(民法1030条)。
そこで本件では、遺留分減殺の算定の基礎となる財産は、相続開始のときにおいて有した財産:6000万円の自宅+1200万円の預金に、贈与分:父が亡くなる半年前に弟に贈与した300万円を加え、債務:900万円を控除した、6600万円が遺留分の基礎となる財産額になります。
6000万円+1200万円+300万円-900万円=6600万円

個別的遺留分額

質問者の遺留分額は、6600万円(算定の基礎となる財産)×1/3(法定相続分)×1/2(遺留分率(民法1028条に定める率))=1100万円です。

遺留分権利者が相続によって得た財産額

質問者が遺留分減殺前から相続において得られている財産額は、遺言により姉に直ちに相続された自宅を除く預金のみですので、
1200万円×1/3=400万円です。

相続債務負担額

他方、債務も法定相続分に応じて分担することになりますので、
質問者は900万円×1/3=300万円を負担すべきです。

遺留分侵害額

遺留分侵害額は、(2)で計算した個別的遺留分額-((3)で計算した遺留分権利者が相続によって得た財産額-(4)で計算した債務負担額額)の計算式にて計算します。
結果、質問者の遺留分が侵害されている額は、
1100万円-(400万円-300万円)=1000万円
であり、その分の減殺請求を行うことができます。
なお、減殺の対象となるのはその者の遺留分額を超えている部分だけですので、減殺請求を行う相手は姉になります。

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