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名義株の放置は相続トラブルの元。早めの対策で円満な事業承継を。

2018年11月15日
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名義株の放置は相続トラブルの元。早めの対策で円満な事業承継を。

公開会社でない株式会社では、いわゆる「名義株」を放置していることがあります。しかし、名義株があると相続時に思わぬトラブルへと発展する可能性があります。また相続税対策のために名義株を利用している事例もありますが、そうすると税務調査が入り、追徴課税される可能性が高いので注意が必要です。
本コラムでは、相続の場面で名義株にどのような問題があるのか、トラブル事例や注意点について、弁護士が解説します。

1、名義株について

  1. (1)名義株が発生する主な理由

    名義株とは、会社への実際の出資者と株主名義が異なる株式をいいます。
    平成2年に商法が改正されるまでは、株式会社設立のために7人の発起人が必要でした(平成2年改正前商法第165条)。ところが、7人もの発起人を集めることは困難なことが多く、会社に無関係な親族などに名義を借りて、株式の名義人となってもらい、実際には発起人のうち数名がお金を払い、会社を設立することがよくおきていました。これが、よくある名義株が発生する原因です。特に、小規模な同族企業では、親族や従業員などの名義を借りた名義株が多いと言われています。
    いったん名義株が発生しても、本来であれば、名義が不要になった段階で名義貸与人と名義借人が共同して確認書等を作成して株主名簿の書き換え手続きをすれば良いのですが、その手続きをせずに放置しているケースがあります。双方が名義貸しについて忘れているケースもありますし、もともとの創業者が亡くなった後も名義の書き換えをせずに放置されている例もみられます。

  2. (2)相続税対策の名義株もある

    これとは別に、中小企業が事業承継に伴う相続税対策のため、わざと経営者が出資して子ども名義などの名義株を利用しようとしているケースもあります。

2、名義株はやがて紛争へ発展する可能性も

しかし、名義株を放置しているとさまざまなトラブルが発生します。特に「相続」が起こり、名義貸与人と名義借人の代が交代すると、事情をよく知らない相続人が当事者となるので大きな問題に発展しやすいです。

  1. (1)名義人に相続が発生した場合に起こり得るトラブル

    名義人(名義貸与人)が亡くなり、相続が発生すると、名義を貸していた人の相続人が株式の「みかけ上の権利者」となります。
    本来、名義貸与人は、名義を貸していただけなので、株式に対する権利は持っていません。名義を貸した本人はそのことをわかっているので、会社に対する株主としての権利主張を行っていないことが一般的です。
    しかし、相続が発生すると、相続人からすると当該株式が真に被相続人が権利を有しているのかを知る由もなく、具体的な事情を知らないことが多いので「遺産の中に株式があった」という認識で、会社に対し、相続に伴う名義変更や配当金の要求、株主総会開催や出席の要求、株式買取請求などの株主としての権利行使をしてくることがあります。すると、会社との認識違いでトラブルが起こる可能性があります。

  2. (2)名義借人に相続が発生した場合に起こり得るトラブル

    名義を借りていた人(名義借人)が死亡すると、相続人たちにとっては、会社の株主名簿上は被相続人の株式ではないとの記載となっているので、当該株式が名義借人である被相続人の相続財産に含まれるのかがわからなくなってしまいます。
    会社関係者や名義貸人がきちんと覚えていて誠実に対処してくれる場合ならばそれを機会に適切な書類を作成の上、相続人名義に書き換えれば良いのですが、実際にはなかなかそうはいきません。
    相続の機会を捉えて実質的にも株式の権利を行使してしまおうとする名義貸与人もいますし、はっきり覚えていなくてどちらのものかわからなくなり、トラブルになるケースもあります。

  3. (3)相続税対策のための名義株について

    相続税対策のために名義株を設定しているときにも問題が起こりやすいです。
    よくあるのが、前経営者が払い込みをしながらも、子ども名義の名義株にしている事例です。このような場合、実際には子どもが払い込みをしていないので、相続税の税務調査が入ったときに名義株を否認される可能性があります。すると、実際には相続が起こったものとして、高額な相続税や追徴課税の支払いを要求されるので注意が必要です。

    また、名義株を設定していると、事業承継税制の適用も受けられない可能性があります。
    事業承継税制とは、後継者が非上場会社の株式等を先代経営者等から贈与・相続により取得した際、経営承継円滑化法による都道府県知事の認定を受けると、贈与税・相続税の納税が猶予される制度です。
    そして、事業承継税制では、前経営者と後継者の株式の比率が要件の1つとなっています。しかし、名義株が多いとその要件を満たさなくなり、事業承継税制の適用を受けられない可能性があるのです。

  4. (4)相続人間の遺産トラブル

    名義株があると、経営者の子どもや妻など、相続人が複数いる場合にも相続トラブルを引き起こす引き金になる可能性もあります。
    例えば、本来は父親が払込をしながらも長男名義となっている名義株があり、父親が死亡して、長男を含む3人の子どもが相続をしたとします。この場合、本来であれば長男は見かけ上の名義人にすぎないので、株式は3人の相続人の準共有状態となり、平等に株式の権利を分け合うべきです。しかし長男が「自分は名義通り真正な権利者である」と主張することも予想され、他の子どもたちが納得できずに紛争に発展する可能性があるのです。

3、相続税対策のための名義株には、過少申告加算税が課せられることも

事業承継の際、相続税対策のために名義株を利用するとどのような問題があるのか、具体的なケースと共にご紹介します。

  1. (1)真実の株主についての最高裁判所の判例

    名義株を利用する場合、名義の貸与人と名義借人が存在します。これらのうち、どちらが「株式の真正な権利者」なのか、過去に最高裁判所の判例によって明らかにされています。
    最高裁判例昭和42年11月17日は、「他人の承諾を得てその名義を用い株式を引受けた場合においては、名義人すなわち名義貸与者ではなく、実質上の引受人すなわち名義借用者がその株主となるものと解するのが相当である」旨判断しています。
    この判断は現在でも踏襲されているので、名義株が行われている場合、株式に対する権利者は、実質上の引受人すなわち名義借用者、第三者の名前を借りているが実施的に金銭を負担するなどして株式を引き受けた人となります。

  2. (2)名義株にしていても、贈与税または相続税の支払いが必要

    そうだとすると、子ども名義で名義株にしていても、実際に出資したのが父親である経営者であれば、父親から第三者に株式が移転する場合には税金がかかります。たとえば、生前に父親が子どもに株式を贈与したならば贈与税、生前には贈与や譲渡をせずに父親から子どもに株式が相続されたなら相続税の支払いが必要です。
    出資者は父親であるにもかかわらず、株式の名義だけを子どもにしてこれらの税金を支払わなければ脱税状態となってしまいます。
    当然相続税の税務調査が入った際には厳しい対応をとられて追徴課税される可能性があります。

  3. (3)飯田グループホールディングスの事件

    実際に、創業者が子ども名義の名義株を設定していた法人において、申告漏れを指摘されて追徴課税されたケースもあり、有名な例でいいますと、飯田グループホールディングスの株式に関する遺産相続の事例があげられます。
    飯田グループホールディングスの創業者会長が2013年に死亡した際、飯田ホールディングスの資産管理会社の事実上の株主は創業者であるにもかかわらず、長男名義とされていた株式が存在していました。相続税申告の際、長男は「自分の名義の株は自分が所有者である」として、名義株を相続財産に含めませんでした。しかし、その後東京国税局が相続税の税務調査に入り、長男の名義株を否認して80億円を超える申告漏れを指摘しました。結果として、相続人らは過少申告加算税などを含めて40億円余りの追徴課税をされたとみられています。

  4. (4)名義株の税務調査はとても厳しい

    名義株に対する税務調査は非常に厳しいです。名義株の真正な所有者については、古くから最高裁の判断も出て固まっているところです。名義株を設定しておいて「知らなかった」とか「名義通りの権利者です」などと言っても通用するものではありません。
    中小企業の事業承継で、株式を子ども名義にしたいのであれば、株価を適正に算定し、株式譲渡契約書や株式贈与契約書を作成し、会社法上所定の手続き(例えば、譲渡承認に関する取締役会議事録や株主総会議事録の作成や、株主名簿書換手続きを行うこと)を経ておく必要があるでしょう。

4、円満な相続、事業承継のためにも早めに対策を

特に同族会社などの中小企業で相続や事業承継対策をするのであれば、名義株の問題を無視することはできません。
放っておくと、有利な事業承継税制も利用できず、税務調査が入ったときに否認されて高額な相続税が課税されたりしますし、相続人同士のトラブルにもつながってしまいます。今から以下のようなステップを踏んで、名義株をなくす取り組みをしましょう。

  1. (1)社内に名義株がないか調べる

    まずは自社内に名義株がないかどうか、調べましょう。古い時代に名義株になっている場合、現経営者や関係者も正確に把握できていないことがあります。
    株主名簿などを精査して、出資していない親族名義が入っていないかどうかをチェックします。

  2. (2)名義株の名義を書き換える

    名義株があれば、早めに真正な権利者の名義に書き換えるべきです。
    名義書換の方法は以下の通りです。
    まず名義貸与人と名義借人との間で、株式が名義株であることの確認書(株主名簿記載事項確認書)を作成します。その上で、名義人に名義変更の合意書に署名捺印(実印)してもらい、印鑑証明書も添付した方がいいでしょう。
    これらの書類をもって、名義貸与人と名義借人が共同して、会社に対して株主名義の書換手続きを行います。
    なお、当該株式を真正な名義にするための書換手続については、原則として、株主総会や取締役会における譲渡承認決議が必要な譲渡にはあたらないと考えられますが、少なくとも会社も当該名義書き換えについて承諾していることの書面を残しておくことが好ましいと考えられます。

  3. (3)株主と連絡をとれない場合の対処方法

    名義貸与人と連絡が取れないことも考えられます。
    その場合、所在不明株式として、売却(競売・市場価格による売却・自社による買取)・競売・発行者による買受け等)を行うことができる可能性があります。
    この手続きを行う場合には、当該名義貸与株主について、①継続して5年間、株主に対する通知または催告が到達しておらず、②継続して5年間、剰余金の配当を受領しておらず、③株券喪失登録が行われていないことが必要です。
    その上で、取締役会等の決議を行います、会社は、株主名簿に記載または記録のある株主(名義借人)等の利害関係人に対し、売却処理に異議があれば一定の期間内に異議申述をすべき旨の公告および個別催告を行います。
    異議申述期間満了時に、所在不明株主の株式は無効となります。
    当該の手続きを行えば、所在不明株主は株主としての地位を喪失します売却代金については、10年間、発行者へ支払請求することができます。

  4. (4)名義株を解消する際の注意点

    名義株の名義を書き換えて真正な名義にする際、注意点があります。

    ①名義人が株主として扱われていないか確認すること
    名義人が、毎年開催される提示株主総会への招集通知が送付されていなかったか、名義人に対して配当が行われていなかったか、株主総会の議事に参加したり、その他株主として扱われていなかったかを確認すべきです。名義人が既に株主として扱われていれば、名義人が真の株主と判断される可能性があるからです。

    ②名義株であることを示す資料の収集が必要
    次に、名義株であることを示す資料を準備することが必要です。
    名義株であることを証明できないのに株主名簿を書き換えると、贈与があったと判断されて、贈与税が課税される可能性があるからです。
    具体的には、出資金を払い込んだ際の資料、配当金の支払い状況、株式を引き渡した際の資料、名義人が株主総会に出席していないことがわかる資料など収集し、客観的な資料に基づいて、名義株を解消するために、会社内で十分な検討をすべきです。

まとめ

名義株を放置しているといろいろな問題が起こります。 「もしかして、自社内にも名義株があるかもしれない」という場合、早急に弁護士や税理士に相談しましょう。 ベリーベストグループには弁護士も税理士も在籍しておりますので、事業承継や相続対策のご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

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