お悩み相談室(コラム)

このエントリーをはてなブックマークに追加

遺言書の効力を弁護士が解説。自筆で書かれた遺言書の法的な効力とは!?

2018年08月20日
  • 遺言
  • 遺産相続
  • 遺言

遺言書の効力を弁護士が解説。自筆で書かれた遺言書の法的な効力とは!?

身内の方がお亡くなりになったとき、ご生前に作成された遺言書が見つかる場合があります。遺言書によって現金や自宅などの取扱いを詳細に指定しているだけではなく、生命保険の受取人を指定したり、さらにはお墓に対する要望や飼犬の世話役に至るまで、多方面にわたっていろいろなことが書かれていたりするケースも考えられます。
詳細な遺言書が見つかったとき、相続人はすべて遺言通りに行動しなければならないのでしょうか?
今回は、自筆証書遺言の法的な効力について、弁護士が解説します。

1、法的に効力が認められる遺言書とは?

遺言書は、人が最終的な意思表示を行うための書面であり、さまざまな法的効力が認められています。たとえば、遺言書によって相続人を指定したり相続人以外の人に財産を分与したり、財産を寄付したりすることなどが可能です。また、遺言書には民法によって定められた厳格なルールがあり、その要式に従っていないと効力が認められません。
普通方式の遺言書には、以下の3種類があります。

  1. (1)公正証書遺言とは

    公正証書遺言は、法務大臣が任免する公証人が「公正証書」という公文書の形で作成する遺言書です。作成の際には2人の証人が必要です。遺言書の中でも信頼性が高く、遺言書として無効になる可能性が低いという特徴があります。また、公証役場で原本が保管されるので、紛失や偽造などのおそれもほとんどありません。

  2. (2)秘密証書遺言とは

    秘密証書遺言とは、内容を秘密にしておける遺言書です。秘密証書遺言を作成するときには、遺言書を遺言者自身が作成し、封入して公証役場で認証してもらいます。ただし遺言内容については公証人のチェックを受けないので、効力が認められないケースもあります。
    また、秘密証書遺言によって遺産相続手続きをするためには、家庭裁判所で検認手続きを受ける必要があります。検認を受けずに遺言書を開封すると、5万円以下の過料の制裁を受けることになります。

  3. (3)自筆証書遺言とは

    自筆証書遺言とは、遺言者が全文自筆で作成する遺言書です。自宅で簡単に作成できますが、要式違反を起こしやすく、効力が認められないケースも多いです。
    また、せっかく自筆証書遺言を作成しても発見されないことがありますし、相続人や利害関係人によって偽造・変造されるリスクも高いタイプの遺言書です。自筆証書遺言の場合にも、秘密証書遺言と同様に、家庭裁判所における検認が必要であり、検認を受けずに開封した場合の罰則も定められています。

2、自筆で書かれた遺言書は無効になるケースが多い

自筆証書遺言が発見されたときには注意が必要です。
なぜなら、自筆証書遺言は、他の形式の遺言に比べて法律的に無効になるケースが多いからです。
自筆証書遺言に効力が認められない、よくあるパターンは、以下の通りです。

●一部がパソコンで作成されている
自筆証書遺言は全文遺言者が自筆で作成する必要があるので、遺産目録など、一部でもワープロやパソコンで作成されている場合、効力が認められません。

●遺言書に日付が入っていない
日付を入れていない場合やスタンプ印などで日付を入れてしまった場合、「〇年〇月吉日」などと特定できない日付を入れた場合などにも遺言書に効力が認められません。

●署名・押印がない
本文がどれだけしっかり書いてあっても、署名押印がなければ遺言書の効力が認められません。

●遺言書の修正方法が間違っている
遺言書を加除訂正するときには、民法の定める訂正のルールに従っていなければ加除訂正に効力が認められません。

3、法的に効力が認められる遺言の内容とは?

遺言書に書いたときに法的な効力が認められるのはどのような事項なのか、ご説明します。

  1. (1)財産に関する遺言事項

    ●相続分の指定、指定の委託
    遺言により、相続人の相続分を指定したり、あるいは自分で直接指定するのではなく、指定を第三者に委託したりすることができます。

    ●特別受益者の持ち戻し免除
    特別受益者がいるときには特別受益の持ち戻し計算がされるのが原則ですが、遺言書によって持ち戻しを免除することができます。
    ※特別受益者とは、被相続人の生存中に「特別受益」を貰っていることを理由に、公平を図るために相続分が少なくなる相続人のことです。また特別受益とは、相続人が被相続人から生前に貰っていたお金や金銭的価値のあるもののことです。

    ●法定相続人以外の第三者への相続財産の遺贈
    本来法定相続人ではない内縁の妻などに遺産を遺贈することができます。

    ●相続人の廃除や廃除の取り消し
    一定の場合に、遺留分を有する推定相続人(兄弟姉妹以外の推定相続人)の相続権を奪ったり(廃除)、その廃除を取り消したりすることができます。

    ●遺産分割方法の指定、指定の委託、分割の禁止
    遺産分割方法を指定したり、指定を誰かに委託したり、あるいは遺産分割を一定期間禁止したりできます。

    ●共同相続人の担保責任の指定
    相続人は、法定相続分に応じて担保責任を相続するのが原則ですが、遺言者は、遺言によって担保責任の負担割合を変え、加重したり減免したりすることが可能です。

    ●遺留分の減殺方法の指定
    遺言によって法定相続人の遺留分を侵害すると、被侵害者は遺留分減殺請求をすることができますが、その場合、遺贈に対する遺留分減殺請求の方法を遺言書によって指定しておくことができます。たとえば、先に預貯金に対して遺留分減殺請求を行い、その後に不動産を対象にすべきなどと定めておくことにより、遺留分減殺請求が起こったときのトラブルを最小限に止めることが可能となります。

    ●財団法人を設立するための寄付
    遺言書により、財団法人を設立するための寄付行為をすることができます。

    ●信託の設定
    遺言により、遺産を信託することが可能です。

  2. (2)身分に関する遺言事項

    ●子どもの認知
    遺言書により、子どもを認知することが可能です。生前に認知すると家族とトラブルになることが予想されるケースなどでこのようなことが行われることがあります。

    ●生命保険の受取人変更
    遺言書によって、生命保険の受取人を変更することも可能です。
    これも、生前に変更するとトラブルが予測されるケースなどで利用されることがあります。

    ●後見人、後見監督人の指定
    たとえば未成年の子どもを残して死亡する場合などには、子どもの後見人や後見監督人を指定することが可能です。

  3. (3)遺言の執行に関する遺言事項

    ●遺言執行者の指定および指定の委任
    遺言をするときには、遺言執行者を指定したり、第三者に遺言執行者の指定を委任したりすることができます。
    遺言執行者とは、遺言内容を実現する人のことです。遺言執行者がいる場合、不動産の名義変更や預貯金の解約払い戻し、相続人への配当などを遺言執行者が行うので、遺産相続の手続きがスムーズになります。また、遺言書によって子どもの認知や相続人の廃除、取消を行うときには、必ず遺言執行者の選任が必要です。

    反対に、以下のような内容には法的効力が認められません。
    たとえば「兄弟仲良くするように」「犬を大切にしてほしい」「感謝の気持ちを忘れずに」などと書かれている場合、法的な効力がないので、強制されることはありません。

4、遺言書の内容は必ず守らなければならない!?法的な罰則は?

もしも遺言書が残されていたら、その内容を必ず守らなければならないのでしょうか?

  1. (1)遺言が無効である

    遺言書が見つかった場合には、必要であれば検認手続を行い、その後、遺言の有効性について確認する必要があります。形式等の問題により遺言が無効なのであれば、従う必要はありません。
    有効な場合には、基本的に遺言書の内容に従うべきです。ただ、以下のように、遺言書に従わなくても良いケースもあります。

  2. (2)相続人全員が合意する

    遺言書によって相続分の指定や遺産分割方法の指定が行われていても、遺産分割協議において、共同相続人全員が納得して別の方法により遺産分割することに合意すれば、相続人間の合意内容を優先することも可能です。そういった遺言内容と異なる遺産分割協議の結果にも効力が認められます。ただ、相続人全員が合意しない場合には、遺言書と異なる対応をすることはできませんし、トラブルになる可能性が高くなります。たとえば、遺言によってある相続人が受けた特別受益の持ち戻し免除が定められているのに、他の相続人が当該相続人の特別受益を主張して持ち戻し計算をしようとしたら、特別受益者が納得せず、持ち戻し計算をしない方法による遺産分割を求めてくるでしょう。
    合意によって遺言内容と異なる分割方法を実現したいなら、必ず「相続人全員」が同意する必要があります。

  3. (3)遺留分を侵害している

    遺言書が遺留分を侵害しているケースにおいても、遺言書は有効ですが、遺言書記載の内容に従わずに遺産分割を行うことができます。
    遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる、最低限の遺産取得分のことです。
    遺留分が認められるのは、以下のような相続人です。

    • 配偶者
    • 子ども、孫などの直系卑属
    • 親、祖父母などの直系尊属


    兄弟姉妹やその代襲相続人である兄弟姉妹には遺留分が認められません。
    親などの直系尊属のみが相続人となる場合には遺留分は被相続人の財産の3分の1となり、それ以外のケースでは、遺留分割合は2分の1となります。
    遺言によっても遺留分を侵害することは認められていないので、遺留分を侵害する内容の遺言書がある場合、侵害された相続人(遺留分権利者)は、遺留分を侵害している他の相続人に対して「遺留分減殺請求」をすることができます。
    すると、遺留分権利者と遺留分を侵害している他の相続人とが遺留分の返還について話し合いを行ったり裁判で争ったりすることも起こりえるため、ご家族の間で大きなトラブルが発生するケースも多いです。このようなときでも、遺言により、遺留分減殺請求の方法を指定しておけば、トラブルを小さく収めることが可能となります。

5、まとめ

身内の方がお亡くなりになって、遺言書が見つかったとき、「どのような効力が認められるの?」と疑問を感じるケースは多いものです。そもそも自筆証書遺言が有効なのか、偽造ではないのかなど、疑わしい場合もあります。
また、自筆証書遺言や秘密証書遺言を発見したときには、まず家庭裁判所に申し立てて検認を受けないと、遺産相続手続きを行うための効力が付与されません。
遺言書の取り扱いや効力に疑問や不安を感じたら、専門家である弁護士に相談し、回答を求めることがもっとも確実で安心です。
ベリーベスト法律事務所には、これまで遺産相続案件について数多くご相談いただいております。家族内の余計なトラブルを未然に防止して円滑な相続手続きを実現するお手伝いをいたしますので、まずはお気軽にお問い合わせ下さい。

このエントリーをはてなブックマークに追加

同じカテゴリのコラム(遺言)

このエントリーをはてなブックマークに追加
閉じる
PAGE TOP