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遺留分減殺請求で相続財産を取り戻す手引きと請求された場合の対処法

2018年06月12日
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遺留分減殺請求で相続財産を取り戻す手引きと請求された場合の対処法

遺留分とは、一定の相続人のために、相続に際して、法律上取得することを保障されている相続財産の一定の割合のことで、被相続人(亡くなった方)の生前の贈与又は遺贈によっても奪われることのないもののことをいいます。
家族のひとりが親の遺産を独り占めするなどして困っているとお悩みの方は、弁護士までご相談ください。
このような場合、遺留分を侵害された者が、贈与又は遺贈を受けた者に対し、遺留分侵害の限度で贈与又は遺贈された物件の返還を請求できる可能性があります。

1、よくある遺留分の侵害が認められるケース

よくある遺留分の侵害が認められるケースは、亡くなった人が、何人もいる相続人のうちの1人に、全ての財産を与える遺言をしていたような場合です。
たとえば、父親が亡くなっており、母1人兄弟2人の家族において、母が遺言で全ての財産を長男に渡したとします。この場合、相続人である二男は、遺産の4分の1について、自己の持分であることを権利として主張することができます。この4分の1を主張する権利が、遺留分減殺請求権です。

2、遺留分減殺請求ができる人は?

遺留分減殺請求ができる人は、相続人のうち、配偶者、子(およびその代襲相続人)、直系尊属のみです。兄弟姉妹は、相続人に当たりますが、遺留分減殺請求をできないことについてご注意ください。
なお、代襲相続人とは、相続人となるべきだった人が、被相続人が亡くなったときに、すでに死亡している等して相続権を失っているときに、その者の代わりに相続人となった直系卑属のことをいいます。また、直系卑属とは、子ども・孫など、ご自身から見て垂直につながる世代が下の血族のことをいい、直系尊属とは、父母・祖父母など、ご自身から見て垂直につながる世代が上の血族のことをいいます。
また、遺留分減殺請求ができる人であっても、①相続欠格、②廃除または③相続放棄をした場合には、遺留分を請求することができません。
まず、①相続欠格とは、相続人のうち、相続制度の基盤を破壊する悪質な行為をしたものに対して、被相続人の意思を問うことなく、法律上当然に相続資格を剥奪し、相続権を失わせる制度のことです。たとえば、被相続人を故意に殺害することや、被相続人の遺言書を偽造することなどが欠格事由に当たります。
次に、②廃除とは、被相続人の請求により、家庭裁判所が、著しい非行行為等をした推定相続人の相続資格を奪う制度のことです。たとえば、被相続人に対する虐待・重大な侮辱をした相続人が、廃除請求の対象になります。
そして、③相続放棄とは、相続人が、被相続人の権利や義務を一切受け継がない旨の意思表示をすることです。相続放棄をするためには、相続人が自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所に対して申述をする必要があります。

3、遺留分の割合について

遺留分権利者の遺留分割合は、①相続人全員の遺留分割合と②相続人それぞれの遺留分割合がいくらか、という観点から考えます。
まず、①相続人全員の遺留分割合は、相続人が誰になるかによって決まります。
一方、②相続人それぞれの遺留分割合は、①に法定相続割合を乗じることによって決まります。
具体的な遺留分割合は、以下の図のとおりです。

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遺留分の割合について

相続人の構成 ①相続人全員の
遺留分割合
②相続人それぞれの遺留分割合
配偶者 子ども 父母 兄弟
配偶者のみ 1/2 1/2 × × ×
配偶者と子ども 1/2 1/4 1/4 × ×
配偶者と父母 1/2 1/3 × 1/6 ×
配偶者と兄弟 1/2 1/2 × × ×
子どものみ 1/2 × 1/2 × ×
父母のみ 1/3 × × 1/3 ×
兄弟のみ × × × × ×

4、遺留分の計算方法について

遺留分額は、遺留分算定の基礎となる財産に、遺留分の割合を乗じることによって算出されます。
この基礎財産は、相続開始時点で被相続人が有したプラスの財産の価額に、被相続人が相続開始前の1年間にした贈与した財産の価額を加え、被相続人のマイナスの財産(債務)を差し引くことによって算出します。

それでは、相続人は、妻、長男および長女で、被相続人は、亡くなった際、4000万円のプラスの財産、2000万円のマイナスの財産を有しており、被相続人が相続開始直前に3000万円の贈与を行った、という場合の遺留分を計算してみましょう。

①まず、遺留分権利者についてですが、妻、長男および長女は、いずれも遺留分権利者に当たります。
②次に、遺留分割合についてですが、妻が1/4(1/2×1/2)、長男が1/8(1/2×1/4)、長女が1/8(1/2×1/4)となります。詳しくは、先ほどの図をご覧ください。
③そして、基礎財産については、相続開始時点で被相続人が有したプラスの財産4000万円に、被相続人が相続開始前の1年間にした贈与した財産3000万円を加え、被相続人のマイナスの財産2000万円を差し引いた金額、すなわち、4000万円+3000万円-2000万円=5000万円になります。
④最後に、この基礎財産に個別的遺留分割合を乗じれば、遺留分額が算出できます。
具体的には、妻は5000万円×1/4=1250万円、長男は5000万円×1/8=625万円、長女は5000万円×1/8=625万円の遺留分額を有することになります。

5、遺留分を計算するときの注意点

遺留分を計算するときに注意しなければならない点として、遺留分計算の基礎になる財産(基礎財産)は、被相続人が亡くなったときに、被相続人が有していたプラスの財産がそのまま基準になる訳ではない、ということです。
まずは、被相続人が亡くなる1年前までになされた贈与や、遺留分権利者を害することを知ってなされた贈与など、被相続人が生前に贈与した一定の財産も、この基礎財産に含まれます。一方で、被相続人が亡くなったときに負っていた相続債務は、基礎財産から控除されます。

6、遺留分減殺請求を行う方法と注意点

遺留分減殺請求の方法には特にこれといった決まりはなく、必ずしも裁判による請求を行う必要はありません。仮に、遺留分権利者がその侵害者に対して、口頭のみで請求をしたとしても、効力が生じることとなっています。
しかし、相続人の中で遺留分が問題になる場合、家族のひとりが親の遺産を独り占めするなど、すでに問題が生じてしまっている場合が多くあります。このような場合に、口頭のみで請求をしたとしても、証拠が何もないため、裁判になったとき主張が認められない危険が高くなります。
そこで、以下では、遺留分減殺請求を行う方法を3つほど紹介した後、請求をする際の注意点についてご説明します。

7、内容証明郵便を送る

1つ目の方法として、内容証明郵便によって請求する方法があります。
内容証明郵便とは、いつ、どのような内容の文書が誰から誰に差し出されたかということを、日本郵便株式会社が証明してくれる制度です。
内容証明郵便を送ったことによって、直ちに何らかの法的な義務が生じるといったことはありません。しかし、口頭のみで遺留分の減殺請求した場合と異なり、この請求をしたことが証拠として残り、その後、裁判になったときに証拠となる点で、メリットがあります。
実務においては、遺留分減殺請求権を行使する場合、内容証明郵便にて相手方に主張します。

8、遺留分減殺調停で請求する

2つ目の方法として、遺留分減殺による物件返還調停を申し立てる方法があります。
家庭裁判所の調停を申し立てただけでは、相手方に対する意思表示とはなりませんので、調停の申し立てとは別に内容証明郵便等により意思表示を行う必要があります。
この調停は、家庭裁判所で裁判官や専門の調停委員を交えた形で、相手方と話し合いをするものです。
調停の結果、相手方との間で合意が成立したら、調停調書というものが作成されます。この調書には、強制力があり、話し合いで決めたことが守られなかった場合には、強制執行ができるというメリットがあります。
もっとも、この調停は、相手方が調停による話し合いで解決することを望む場合にのみ認められ、調停が成立しなかった場合には、調停調書は作成されません。
その場合、次に説明する裁判の方法によることになります。

9、遺留分減殺請求訴訟を起こす

3つ目の方法として、裁判所に訴訟を提起する方法があります。
裁判の場合、相手方が裁判による解決を望まない場合でも、相手方の一存で裁判を拒絶することはできません。そのため、裁判には、遺留分に関する争いを終局的に解決できるというメリットがあります。
ただし、調停や裁判といった法的な手続きは解決までの時間が長く、裁判所に足を運んだり、書面を作成したりする手間もかかりますので、調停や訴訟を検討されている方は、弁護士に相談してみてください。

10、遺留分減殺請求には期間制限がある~時効と除斥期間~

遺留分減殺請求をする際の注意点として、請求できる期間に制限があることが挙げられます。
1つは「時効」です。①相続が開始したこと、②減殺すべき贈与または遺贈があったことを遺留分権利者が知ったときから1年間遺留分減殺請求権を行使しないときには、遺留分減殺請求権は時効によって消滅してしまいます。
2つめは「除斥期間」です。相続開始のときから10年を経過すると、遺留分減殺請求権は除斥期間の経過によって消滅してしまいます。
この2つの制度は、①期間の長さが1年か10年かという違いと、②遺留分権利者が相続開始の事実等を知っている必要があるかどうかという違いがあります。
たとえば、遺留分権利者が被相続人と疎遠であり、相続が発生したことを知らないまま数年が経過してしまったような場合に違いが出てきます。被相続人が亡くなったことについて10年以内に気付いた場合、内容証明郵便等によって請求をすれば、遺留分減殺請求権はまだ消滅しておらず、請求が認められる可能性があります。しかし、被相続人が亡くなった後、10年経過してから気付いた場合、すでに遺留分減殺請求権は消滅してしまっており、請求することができません。

11、遺留分減殺請求された場合の対処法

ここまでは、遺留分減殺請求をする場合について説明してきましたが、ここからは、遺留分減殺請求をされた場合の対処法について説明します。

12、請求内容をしっかりと確認する

相手方から遺留分減殺請求をされた場合、まずは、相手の請求内容を正しく理解するようにしましょう。
その際、①誰が(相手方と被相続人やあなたとの関係)、②どのような内容を(相手方が主張する遺留分割合)、③いつの時点で(時効や除斥期間が経過していないか)請求してきているかを、しっかりと確認しましょう。

13、内容証明郵便を無視しない

内容証明郵便が届いた場合に、内容を一読し、そのまま放置してしまうことは危険です。
請求された際に、相手方との交渉に応じていれば、双方が納得のいく形で話が進む可能性があります。
一方で、内容証明郵便を無視している場合、相手方はあなたが話し合いに応じる意思がないものと考え、調停を申し立て、それにも応じなければ訴訟を提起するという流れで、どんどん手続きが進行していってしまいます。先ほど説明したとおり、内容証明郵便は、いつ、どのような内容の文書が誰から誰に差し出されたかということを日本郵便株式会社が証明する文書であるため、無視しても、何もなかったことにはできません。
他方で、内容証明郵便が届いたからといって、相手方が要求するとおり、絶対に遺留分を返さなければならない訳ではありません。それにもかかわらず、内容証明郵便が届いたことによって焦ってしまい、相手が言うがまま財産を引き渡すことは賢明とは言えません。
そのため、内容証明郵便が届いたら、無視をせず、焦らず、慎重な対応をすることが必要です。

14、弁護士への相談を検討する

慎重な対応をするといっても、どのように対応をして、どのように交渉をすればいいのか、見当がつかない場合が多いかと思います。
法的な反論をしようと思っても、相手方に弁護士がついている場合、正確な反論をすることは非常に困難になるかと思われます。
そのため、お悩みの際は気軽にご相談ください。相談をしたとしても、直ちに契約が成立する訳ではなく、迷われている場合は、しばらく時間をおいてゆっくり考えていただくこともできます。

15、まとめ

このように、遺留分額の算定は、計算方法や言葉の意味、対処方法など難解な内容が多々あります。
遺留分等についてお知りになりたい場合は、弁護士までご相談ください。

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