遺言

基礎知識

遺言とは

解説

遺言とは、被相続人が、自己の財産(相続財産)について、死後に「遺す」「言葉」を意味しています。
被相続人としては、自分の財産を、誰に、どのような形で残すかということについて、自分自身の意思を尊重してもらいたいと考えるのは自然な発想です。また、自分の意思を相続人に伝えることにより、自分の死後、相続人間で無用な争いが生じることを防ぐことができます。
しかし、相続の場面は、通常の契約等における財産処分の場面と大きく異なります。相続が発生した時点で、被相続人は死亡しており、被相続人の意思の内容が本当に真意に基づくものか確認する手段がないのです。
そこで、民法は、遺言について厳格な「方式」を定め、「遺言をなしうる事項」について、方式に従った遺言がなされる限り、その遺言の内容を被相続人の意思として法的に保障することとしました。
逆に、民法の方式に従っていない場合、たとえば、相続人の一人が、生前に被相続人が財産について「自分の死後、●●に■■をあげるといっていた」などと主張しても法律上は意味がありません。被相続人が死亡している以上その意思を確認することができないからです。

遺言できる事項はなにがあるの?

解説

遺言は、生前の被相続人の意思を保障する制度ですから、遺言できる事項は相続の場面で法的に意味がある事柄に限定されます。遺言できる事項はおおよそ次のとおりです。

  1. ア 相続に関する事項
  2. ① 相続分の指定又は指定の委託
  3. ② 遺産分割方法の指定又はその委託
  4. ③ 特別受益者の相続分に関する指定
  5. ④ 推定相続人の排除とその取り消し
  6. ⑤ 遺産分割の禁止
  7. ⑥ 共同相続人間の担保責任の定め
  8. ⑦ 遺留分減殺方法の指定
  9. イ 財産処分に関する事項
  10. ① 包括遺贈及び特定遺贈
  11. ② 一般財団法人の設立
  12. ③ 信託の設定
  13. ウ 身分に関する事項
  14. ① 認知
  15. ② 未成年後見人の指定、未成年後見監督人の指定
  16. エ 遺言執行に関する事項
  17. ① 遺言執行者の指定又はその委託
  18. ② 特別受益の持戻し免除
  19. オ その他
  20. 祭祀承継者の指定

遺言の種類にはどんな種類があるの?

解説

民法上、遺言の方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、危急時遺言、隔絶地遺言の5種類があり、このいずれかの方式に従っていないと遺言は無効になります。
この5種類の遺言は、大きく普通方式の遺言と特別方式の遺言に分けることができます。
普通方式は、本来の遺言の方式で、自筆証書、公正証書、秘密証書の3種類がこれに当たります。通常は普通方式の遺言を用いることになります。
他方、死が差し迫り、普通方式に従った遺言をする余裕がない場合に用いられるのが特別方式です。危急時遺言は疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言しようとするときに用いられる方式です。隔絶地遺言には、伝染病により隔離された者の遺言(伝染病隔離者遺言)と船舶中にある者の遺言(在船者遺言)があります。
特別方式の遺言はめったに用いられることがありませんが、それぞれ厳格な様式を求められていますので、もし、特別方式の遺言による相続の問題が生じた場合には当事務所にご相談ください。

自筆証書遺言とは

解説

自筆証書遺言とは、遺言者がその全文、作成日付及び氏名を自書し、押印することによって作成する遺言のことです。
3種類の方式の中で、もっとも簡単な方式の遺言であり、費用もかからない方式です。また、証人を必要としないため、遺言の存在や内容をすべての第三者に秘密にしておくことができるという長所があります。
他方、紛失、偽造、変造の危険や、方式の不備による無効のおそれ、表現が不適切で文言の解釈に争いが生じるおそれがあり、これらの点は自筆証書遺言の短所といえるでしょう。
自筆証書遺言は、本文はもちろん、日付も自書されている必要がありますし、署名も自筆であることが必要です。代筆は一切認められません。当然ワープロやパソコンを用いることもできません。したがって、自書する能力のない人は自筆証書遺言を利用することができません。
なお、押印については実印である必要はなく、認印でもよいとされています。
自筆証書遺言は、自分の死後相続人にしっかり読んでもらう必要があるわけですから、読みやすい字で、内容も明確にし、相続財産について遺漏なく記載することが求められます。また、遺言書を見つけてもらえなければまったく意味がありません。ですから、自筆証書遺言の内容を確実に実現するためには、作成段階から弁護士に依頼し、内容を確認してもらい、場合によっては保管も依頼しておくことが望ましいと言えるでしょう。

秘密証書遺言とは

解説

秘密証書遺言は、公証人や証人の前に封印した遺言書を提出し、遺言が存在すること自体は明らかにしつつ、その内容を秘密にして遺言書を保管することができる方式の遺言のことです。秘密証書遺言の作成要件は次のとおりです。

  1. ① 遺言者が遺言書に署名し押印すること
  2. ② 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印象をもってこれに封印すること
  3. ③ 遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること
  4. ④ 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名押印すること

秘密証書遺言には、遺言の内容を他者に秘密にできる、自書能力がなくても遺言を作成できると言った長所があります。
他方、作成手続きには公証人が携わりますが、遺言の内容にはタッチしないため、内容に疑義が生じるおそれがあります。また、公証人役場には遺言書を作成した事実だけが記録されるのみで、遺言書の原本が保管されるわけではありませんので、遺言書の紛失、隠匿、未発見のおそれはあります。
そのため、自筆証書遺言と同様、秘密証書遺言の内容や保管について、最初から弁護士に相談しておくことが望ましいと言えるでしょう。

公正証書遺言とは

解説

公正証書遺言は、次の方式に従い、公正証書で作成される遺言です。

  1. ① 証人2人以上の立会いのもと
  2. ② 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授する
  3. ③ 公証人が遺言者の口授を筆記する
  4. ④ 遺言者および証人が筆記の正確なことを証人したのち、各自これに署名押印する
  5. ⑤ 公証人が、その証書が以上の方式に従って作ったものである旨付記して、これに署名押印する

公正証書遺言によれば、公証人役場で遺言を保管してくれますので、遺言書の紛失、第三者による変造の危険はほとんどありません。また、公証人が内容を含めて作成に携わりますので、方式違反による無効のおそれ、文言の疑義の発生等を防止することもできます。ですから、公正証書遺言は、3種類の中で最も安全な遺言の作成方法と言えるでしょう。また、公正証書遺言では検認の手続きを経る必要がありません。
他方、公正証書作成には費用がかかること、証人2人とともに公証人役場に行かなければならないこと、遺言の存在及び内容を証人に知られてしまうこと等の短所もあります。
公正証書遺言はもっとも安全な遺言の方法であり、積極的に利用してよいと思われますが、公証人とのやりとりや、どのような文言で作成するかなど初めから弁護士に相談しながら作成する方がスムーズに手続きを進めることができると思います。

検認とは

解説

遺言の内容を実現するためには、様々な法律行為や事実行為をする必要があり、遺言の内容を実現するための行為を遺言の執行といいます。
遺言が方式に違反している場合は無効になりますから、遺言の執行にあたっては、遺言が法定の方式に従っているかを確認することが必要です。
公正証書遺言以外の遺言については方式や内容について公証人によるチェックがなされていませんので、家庭裁判所が遺言の方式をチェックすることになり、これが検認といわれる手続きです。
公正証書以外の遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して検認を請求しなければなりません。
検認は、遺言書の保存を確実にして、後日の変造や隠匿を防ぐ一種の証拠保全手続きと言えるでしょう。

遺言執行者とは

解説

遺言執行者とは、遺言に記載されている内容を実現する人のことをいい、その内容を実現することを遺言執行といいます。遺言執行の具体例としては、不動産を相続される場合に指定された相続人に移転登記すること、預金の解約や引き出しなどをすることなどです。
遺言の執行は、相続人自身で行うことができますが、遺言執行者が定められる場合があります。
また、子の認知や相続人の廃除・その取消の場合には遺言執行者を置かなければならないとされています。
遺言執行者の選任は、遺言によるか、利害関係人の請求により家庭裁判所が行うものと定められています。遺言執行者に指定された者は、遺言者との関係やその遺言内容を検討し、就職するか辞退するかを決めることになります。
遺言執行者は、相続財産の管理その他、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有していますが、まずは、遅滞なく相続財産目録を調整して、相続人に交付しなければなりません。また、遺言執行者は、遺言の執行に関して相続人との間で委任類似の関係に立つといえるので、委任契約における受任者の義務、責任、費用償還に関する規定が準用されることになります。
遺言執行者が選任された場合は、相続人は遺言の対象となった財産について、処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができなくなります。
遺言執行者の事務を包括的に第三者に行わせることは原則禁止で、遺言によってあらかじめ許されている場合か、やむを得ない事由が無い限りできませんが、遺言執行に関する個々の問題について弁護士などの第三者を遺言執行者自身の代理人ないし受任者として利用することは当然にできます。
遺言執行者としてなすべき事項は多岐にわたり、場合によっては訴訟等の対応が必要になることもあります。将来的に紛争に発展することが見込まれる遺言の場合は、あらかじめ遺言で弁護士を遺言執行者に指名しておくか、個別に対応が必要な事項について遺言執行者から弁護士に対応を委任するなどの対応が考えられるところです。