相続税対策

相談事例

1. 生前対策その1

時間をかけて対策を行うことにより、相続税の大幅な減額が可能に

相続に重要なことは3つあります。
① 節税、② 納税資金の確保、③ 遺産分割
です。

特に気になる点は節税です。
節税することにより納税資金は減額され、また、節税のためには有利な遺産分割方法を検討する必要があります。
節税するベストな方法は生前からなるべく長い時間をかけて対策を行うことです。

今回は、特に典型的な生前対策の手法についてご紹介します。

家族図

山田家(仮称)は東京都内に一軒家の自宅、東京近郊に更地を保有しています。
また、預貯金や株式もお持ちですし、何より東京都内に自宅、更地をお持ちのことから、それなりの相続税の金額が予想されます。
推定相続人は、配偶者とお子様2人。推定相続人ではありませんが、お孫様も4名いらっしゃいます。

対策の結果

相続税額:
対策前4,600万円⇒対策後2,110万円
2,490万円の減額(半額以下に!)

生前対策前の相続税の予測
自宅土地 10,000万円
自宅建物 2,000万円
都内更地 6,000万円
預貯金株式 22,000万円
生命保険金 8,000万円
合計 4.8億円

上記を法定相続割合どおり相続した場合(配偶者2分の1、お子様4分の1ずつ)
相続税総額 4,600万円(配偶者控除あり、小規模の適用考慮外)

対策

対策① 配偶者への自宅持ち分の生前贈与

20年以上連れ添った配偶者への自宅持ち分の生前贈与は2,110万円まで非課税で贈与が可能です。
相続すれば2,000万円部分も課税されますが、配偶者への生前贈与を活用すれば無税で贈与できます。
今回は自宅建物を1,000万円分、自宅土地を1,000万円分贈与しました。

対策② お孫さん等の養子縁組

ご事情がゆるせばお孫さんを養子縁組してしまうのも効果的です。
養子縁組はお孫さんはお孫さんでもあり、自分の子供と同様にも扱われることになります。
養子縁組を行えば、相続財産の額を1,000万円減額することが可能です。

対策③ お子様、お子様の配偶者、お孫さんへの生前贈与

生前相続対策は長年かければ有利といわれるゆえんはここにあります。
相続税法では、毎年110万円までの贈与であれば贈与税がかからないことになっています。
今回は、配偶者、お子様2人、お子様の配偶者2人、お孫さん4人の合計9人に毎年110万円ずつ贈与(合計990万円)をし、5年間継続します。(5年間の生前贈与額は4,950万円)

対策④ 土地の有効活用

山田家は先祖代々保有する更地を都内に保有しています。
更地の相続税評価額は高く、この評価をどのように切り下げるかが重要な論点になります。
土地の有効活用という側面も含め、ここに賃貸用マンションを建設しました。マンション建設代金は全額銀行借り入れで行いました。

対策⑤ 小規模宅地等の特例の活用

自宅土地建物については相続後も配偶者及び長男家族が居住し続ける予定です。
この場合、小規模宅地等の特例といって、土地の評価額を80%減額することが可能です。
この特例を取れる要件は多種多様です。80%もの減額ができる大きなチャンスですので、慎重に検討したいところでもあります。

対策⑥ 遺言書の作成(お孫さんへの相続)

仮にお孫さんに相続をしたい場合、遺言書を作成しないと相続することはできません。
お孫さんへの相続を検討している場合には、必ず生前に遺言書を書いてその旨を明らかにします。
ベリーベストには弁護士、司法書士、行政書士もおりますので遺言書作成のお手伝いを可能となります。

対策の結果

対策前の相続財産額 4.8億円  
対策①(配偶者への自宅持ち分贈与) △2,000万円 (便宜上ここで計算しています)
対策②(養子縁組) △1,000万円  
対策③(親族への生前贈与) △4,950万円 (賃貸用建物評価額と借入金の残債を同額と仮定しています)
対策④(土地の有効活用) △3,000万円  
対策⑤(小規模宅地等の活用) △7,200万円  
対策後の相続財産額 2億9,850万円 ※約1億8千万円の減額に成功

対策後の相続税額(配偶者が1.6億円、お子さんが残額を2分の1ずつ取得)
2,110万円

2. 生前対策その2

更地の土地がある場合、賃貸用建物を建設することによって相続税の軽減を図ることができます。

土地の相続税評価額
2割下がります

賃貸物件を建設することにより、土地の評価額を2割下げることが可能です。
例)更地価値の評価額1億円⇒賃貸用建物がある土地の評価額8,000万円

建物の価値は現金の価値の
半額以下に

現金1億円を保有する場合、その1億円で建物を建てると相続税法上の評価額は半額以下になることが多いです。
例)現金の価値1億円⇒建物の価値4,000万円

小規模宅地等の
特例有効活用

状況にもよりますが、賃貸用建物を建てた土地の評価額はさらに半額にできる可能性があります。
例)賃貸用建物の土地評価額8,000万円⇒特例適用後の評価額4,000万円

金融機関からの借入で建物を建てた場合、借入金マイナス相続財産となる。

保有する土地を担保に入れ、借金をして建物を立てば場合、その借金の額は相続財産からマイナスされます。
なお、借入金は賃貸用建物の賃貸料から返済していくことになります。

まとめ

対策前

現金5,000万円、更地評価額1億円を保有する場合
相続財産は1億5,000万円の評価

対策後

現金5,000万円を頭金に銀行から3,000万円借入れて合計8,000万円の建築費で賃貸用建物を建設。
建物の評価額:購入価格8,000万円×0.5=4,000万円の評価
土地の評価額:更地価格1億円×0.8×0.5=4,000万円の評価
借金の評価額:△3,000万円
合計:5,000万円

1億5,000万円の相続財産がなんと5,000万円に圧縮、率にして67%、金額にして1億円の圧縮となります。
もちろん、賃貸物件を建てると空室リスクや借入のある場合の金利上昇リスクなど、様々なリスクを検討する必要があります。
このスキームによって生じる問題点は次のとおりです。

  • 1. 借金を負う(今回のケースでは3,000万円)
  • 2. 空室リスクや金利上昇リスク
  • 3. 地域により更地の方が評価が高いところもある。(市場価値の下落リスク)
  • 4. 全財産を投じてしまった場合、相続税の納税資金がなくなってしまう
  • 5. 争族になってしまった場合、賃貸用物件を分割して相続するのは困難

ベリーベストでは、これらのリスクも考慮し、このスキームによる相続財産の圧縮が適切かどうかを判断します。

3. 生前対策その3

[事例]
  • 地方圏の郊外部の土地: 相続税評価額2億円、実売価格1億円
  • 首都圏の都市部のビル: 相続税評価額3億円、実売価格5億円
  • 金融機関からの借入れ: 5億円
  • 相続人数: 1人(子供)

対策前の相続税

相続税の対策前は、地方圏の郊外部の土地を所有しているだけです。
この場合、課税価格の合計額は、土地2億円です。
子供が一人いるため基礎控除額は6,000万円となり、相続税額は3,900万円となります。

対策後の相続税

地方圏の郊外部の土地をそのままにして、首都圏の都市部のビルを金融機関から借り入れをして購入したとしましょう。
ビルの相続税評価額は3億円ですが、実売価格が5億円ありますので、このビルを担保に借り入れをすることによって5億円調達することができるでしょう。
この場合、課税価格の合計額は0円です。(郊外部の土地2億円+都市部のビル3億円?借入5億円)
つまり相続税はゼロとなりました。
この場合、地方圏の郊外部の土地を1億円で売却したとしても、この現金にも相続税は課税されないことになります。


4. 相続税申告・事後対策

土地の評価を明確にすることで相続後の対策も可能

相続税対策は生前対策が重要ですが、相続発生後にもできることはたくさんあります。

事後対策1:評価額の引き下げ可能性の検討

相続税は相続財産に税率を乗じて計算されます。
しかも税率は累進課税(相続財産額が多ければ多いほど税率が上がる仕組み)ですから、遺産総額の評価額を切り下げることが大きなポイントになります。

対策

対策① 小規模宅地等の特例

例えば被相続人がお住まいになっていたご自宅や経営なさっていた法人が使っている土地などについては小規模宅地等の特例という特別な計算方式の採用が可能です。
例えば1億円の自宅土地がある場合、最大8,000万円評価減され、2,000万円の評価額とすることが可能です。
小規模宅地等の特例をとるためには様々な要件があります。
こちらの要件に当てはまるように遺産分割を考えなければなりません。

対策② 土地の評価の切り下げ(小規模宅地等の特例以外)

相続税計算上の土地の評価計算方法は決められています。
通常はその計算方法に基づき評価額を決定しますが、通常とは言い難い土地などの評価については例えば不動産鑑定士に評価を依頼し、評価計算などをする方法なども認められています。
こんな事例があります。

Mさんは自宅から遠く離れた場所に先祖代々の土地を持っていました。
持っていることは知っていましたが、一度も見に行ったこともありませんでした。
Mさんのお父様が亡くなり、通常の財産評価の計算方法に従い評価してみるとなんとその土地の価値は2,000万円。
当然相続税が2,000万円に対してかかってしまいます。
我々はMさんとその土地を見に行ってみたのですがこれがおどろきでした。なんとゴミの山になっていました。
車が何台も捨てられ、さらにその上にゴミが捨てられ、ゴミから木まで生えている始末。
原状回復は到底不可能なように思えました。
すべてのゴミを撤去し、土地を使用可能な状態にするための費用見積はなんと2,000万円。
もしかするとゴミからでた有害物質で土壌汚染の可能性もありますから、下手をすると土壌の入れ替えまで必要な状態でした。
不動産鑑定士に依頼し土地の評価をしてもらったところ評価額はゼロでした。
税務署にも事情を説明し、不動産鑑定士評価もあることを伝えたところ、相続財産評価額はゼロで問題ないという回答を得ました。

このように通常の計算ですと2,000万円かかてしまうところが工夫によってゼロになることもあります。
今回のケースはゼロという特殊なものでしたが、例えば隣地にお墓がある、上空に高圧線があるなど、減額要因となるものが様々あります。

事後対策2:遺産分割方法の検討

対策

対策① 配偶者控除の活用

遺産分割に関して、納税額を最大限に押えようとするならば配偶者控除をフル活用するとよいです。
相続税法の世界では配偶者に対する相続は甘めに設定されています。
具体的には1億6千万円、もしくは遺産総額×法定相続分まででしたら配偶者が相続した分については相続税はかかりません。
例えば、相続財産が1億円であった場合、すべてを配偶者が相続したら相続税はかからないことになります。
このように配偶者控除を活用するとかなり相続税が減額されるのが普通です。
「なんだ、ではすべて配偶者に相続させれば相続税を払う必要はないのか」と思いがちですが、話はもう少し複雑です。
確かに1次相続(例えばご主人が亡くなる)の時は配偶者控除は活用できますが、2次相続(配偶者である奥様が亡くなる)の時は配偶者控除はもう使えません。
1次相続だけ考えるのではなく、2次相続まで考えて全体のコントロールをしなければ一次相続では税金はゼロになっても二次相続時に多額の税金がかかってしまうということも多々あります。
このように、二次相続までの遺産分割プランを考え、配偶者控除を活用することも重要となります。

対策② 小規模宅地等の特例が取れるようにする

上でも解説した小規模宅地等の特例ですが、遺産分割方法を誤ると特例が取れなくなる可能性があります。
例えば、被相続人とその配偶者がお住まいになっていた自宅に被相続人がお亡くなりになった後も配偶者が住み続けたが、所有権は海外に住む息子に相続していたため、特例適用の要件を満たさず、小規模宅地等の特例が取れなかったケースもありました。
小規模宅地等の特例は相続税の減額幅が大きいのでぜひとも活用したい特例なのですが、適用要件が複雑なため、要件を満たさず特例がとれないことも多くあります。
税理士に相談しながら話を進めて頂くと、このようなミスを防ぐことが可能です。