事業承継

相談事例

1. 親族内事業承継

安定した会社で割合として最も多いのが親族内事業承継です。
特に親族内事業承継は我々の腕の見せ所です。団塊世代が60才を超えてきている昨今、日本政府もいわゆる事業承継税制など、事業承継を円滑に進めるべく、様々な法制度を立案しています。
親族内事業承継ではこれらの知識をフル活用し、最も有利な事業承継プランを策定し、それを実行します。
事業承継に関する法律はいくつもあり、乗り越えるべきハードルも多いですが、幸いベリーベストは弁護士法人、税理士法人、社会保険労務士法人を併設し、あらゆるジャンルに専門家を抱えておりますので、様々な知識を活用したスムーズな親族内事業承継を行うためのバックボーンを有しています。
また、我々はそれらの知識を有用に活用でき、お父様の気付きあげた会社をご子息に承継するという貴重な場面に立ち会えることができるので、最も気合が入る業務でもあります。
また、親族内の事業承継は利害関係者の調整が大変であることも事実で、慎重に進めていく必要があります。親族外事業承継でも利害関係者は多いですが、親族内の場合は利害関係者が口を出しやすい環境であり、ここぞとばかりにいろいろな意見(中には我田引水の意見も目立ちます。)が集まってくるため、利害関係者のそれぞれにメリットがあるように、また、感情的にならないように円滑に進めていくためには我々のような冷静な外部関係者が活躍しなければいけないという側面も持っています。

今回ご紹介する事例は、神奈川県で製造業を営む企業の事例です。
創業社長にはご子息が一人いらっしゃり、一人っ子のご子息が社長として事業承継を進めるパターンでした。ご子息は大学を卒業してから修行のために外の会社に就職し19年ほど勤務、その後に会社に戻り、後継者としての教育が開始されました。
事業承継に注意しなければならないことは、事業承継には「経営そのものの承継」と「自社株式・事業用資産の承継」の2つの側面があることです。経営そのものの承継は我々のサポートよりも社内での体制作りが重要ですが、自社株式・事業用資産の承継にはわれわれベリーベストのような専門家の助けが役立ちます。
実に様々な対策を打った事例ですが、最もインパクトを与えた手法は次のとおりでした。

  1. ① 役員退職金の支給による株価の引き下げ
  2. ② 株価が引き下げられた時点での相続時精算課税制度の活用

① 役員退職金支給による株価の引き下げ

この会社は非常に好調な会社でしたので相続税計算上の株価はとても高いものでした。
ちなみに相続税計算上の株価は会社の純資産額、純利益、配当金額という要素に従って算定されます。
この会社は配当はしてませんでしたから、株価に影響を与えているのは純資産額の大きさと純利益の高さでした。
また、この会社は今後もどんどん業績が上がる予定で、したがって株価もどんどん上がってしまう計画でした。
相続時においては株価がいくらになっているか想像すらできません。
そこで、将来を考えればもっとも株価が低いであろう現状において株式を後継者に移してしまおうとなりました。
繰り返しになりますが、株価に影響を与える要素は純資産、利益、配当です。
この会社では、先代社長であるお父様にご退職頂き、息子さんが新社長に就任、先代社長にはそれなりの退職金が支払われました。
退職金が支払われますと当然利益は減少します。そして純資産も減少します。ゆえに株価が大幅に減額されることになるわけです。
こうして株価をまず下げることをしました。

② 相続時精算課税の選択

株価を下げた後に行ったのが先代社長であるお父様から新社長である息子さんへの株式の贈与です。
今回は相続時精算課税を選択することになりました。通常の贈与では、贈与時に贈与税がかかります。
しかし、相続時精算課税という制度を選択すると、贈与税の支払はせず、相続があったときに贈与分を精算するという制度です。
後々に相続税を支払うことにはなりますが、贈与時には贈与税を支払わなくてもよいということです。
贈与税と相続税の税率を比較すると圧倒的に贈与税の税率のほうが高いです。
この制度を利用すると、贈与税率ではなく相続税率で計算をすることになりますので全体税額を押えて経営権の委譲を早く進められることがポイントです。 なお、相続財産計算上の株式の表額は贈与時の価額になります。
当社の株価は今後どんどん上がっていくことが予想されているため、株価を下げた時点での株価での相続財産の計算はそれだけで有利になります。

③ その他の検討事項

今回はご子息がお一人であったため適用はしませんでしたが、お子様が複数いる場合は併せて経営承継円滑化法の民法特例の適用なども検討しなければなりません。
また、相続税の納税猶予制度の適用の検討も行いましたが、ハードルが高かったことと将来的には上場を目指したいという新社長のご意向もありましのたであえて適用を受けませんでした。

2. 親族外事業承継

社歴50年、不況業種と言われている運送業界において、独自のノウハウの蓄積し、良好な経営状態を保っていた運送業者A社の事業承継の実例です。

社長は2代目社長でした。先代が裸一貫で作り上げたA社を二代目社長が引き継いだのは30年前。若干29歳の時でした。2代目社長はまさに寝る間も惜しんで働き、どんどん会社を大きくしていきました。構造不況と言われる運送業界において、その類まれな経営手腕をいかんなく発揮し、従業員も100名を数えるほどに成長させました。
そんな時我々の所に2代目社長が訪れ、「事業承継をお手伝いしてほしい」とご依頼頂きました。
弊社代表税理士の岸健一は、A社の貸借対照表を見たときに感極まったそうです。「貸借対照表は過去のその会社の歴史を雰囲気で感じることができ、社長はもとより、従業員の努力が最も反映されるんです。こんなきれいな貸借対照表はあまりない。先代、2代目社長の努力がひしひしと伝わってきて、思わず泣きそうになってしまいました。」
そんな優良企業のA社。事業承継に対するご要望を伺うと、なんと従業員に株式も社長の座も引き継ぎたいということでした。2代目社長にはお子さんもいらっしゃいましたが、お子さんはA社を継ぐ気はなかったそうです。2代目社長は、「自分は長くこの会社にしがみ付きたくない。新しい時代は新しい人たちが発展させるべきだ。血縁関係者でなくとも、優秀な人たちに継いでもらった方が私は満足だ。」と。
しかも、株式については可能であれば無償で譲るとまでいいます。

事業承継は経営権の引継ぎと同時に、株式の引継ぎをどう行うかが非常に重要な議論となります。
今回は、現在も在籍する従業員への事業承継ですから、経営権の引継ぎはそんなに難しい話ではありませんでした。
3代目社長になる予定の方は何年か前から、「次は君に社長をやってほしい」と伝えていたそうで、以前からリーダシップを発揮して仕事に取り組んでいたようです。他の従業員からも慕われ、彼が社長になっても問題ないなと思える雰囲気でした。
問題は株式です。A社の株価を試算したところ、株価はおよそ2億円でした。2代目社長は自社株の価値に大変驚いていましたが、資本金が1000万円の会社でも好業績企業や過去に好調だった企業の株価は高くなります。
2億円の価値を3代目経営者とその側近に半分ずつ、つまり1億円ずつの贈与をすることになったわけですが、単純に贈与してしまうと贈与税が大変なことになります。大げさに書けば、1億円の価値のものを贈与されたら実に5,000万円もの贈与税を支払わなければなりません。

我々が取った施策は次の通りです。

① 株価の引き下げ

2億円と評価された株価ですが、様々な手法により、価値を引き下げることができます。
具体的に書いてしまうと話が終わりませんので具体的手法は省略しますが、株価を1.2億円程度に引き下げることに成功しました。
なお、これらの作業は借入をしている銀行などとも綿密な相談をしながら進めます。

② 種類株式の発行

株式の贈与計画に先立ち、定款を変更し、種類株式の発行を行いました。
種類株式とは、普通株式ではない株式を指します。種類株式には様々なものがあり、例えば配当が優先される優先株式、1株持っていればすべての株主の意見を跳ね除けられる黄金株式などがあります。
今回は、無議決権株式などを発行しました。
贈与計画実行中の持ち株割合変動に備え、種類株を活用するのです。これも詳細に書き始めると終わらなくなってしまいますので、種類株式を発行するというスキームがあるということだけおさえておいて頂ければと思います。
ベリーベストは弁護士法人も併設しておりますので法律アドバイスにも万全の体制を期しております。

③ 贈与計画の実行

ようやく株式の贈与計画が実行に移ります。
2代目社長は全株贈与というお気持ちでしたが、税金負担やスピード感を考慮し、一部売却も取り入れました。
約5年間の期間をかけ、ほぼ全株を新経営者へ移転しました。

④ 新経営者への教育

失礼な書き方ですが、贈与計画の実行中には新経営者の方への教育業務も承りました。
新経営者は営業出身でいらっしゃり、今まで決算書をみたり税金について勉強したりしたことはほとんどなかったご様子で、月に1度の勉強会では非常に熱心に取り組んでおられました。

 

事業承継実行完了まで約5年間かけた事例です。